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百万円と苦虫女のkyonのレビュー・感想・評価

百万円と苦虫女(2008年製作の映画)
4.0
変わっても変わらなくてもいい。

蒼井優が女優としてすごく好きだなぁと思わされる1作。

運悪く前科を持ってしまった主人公、佐藤鈴子。
家族とも距離が出来てしまい、100万円を元金に各地を転々とするように。
それはこれまで誰かに受け入れられてこなくとも自分を貫いてきた鈴子にとってはちょっとした冒険だった。

海の見える場所の海の家、山が見渡せる田舎で桃農園のお手伝い、そして都会と田舎がないまぜになった都内。

住む環境によって生きている人間が異なる中、ちょっとでも誰かと深く結びつこうとするとお互いに傷付いてしまう鈴子の旅。

唯一彼女の心情を聞けるのは弟にあてた手紙たちのモノローグ。

やがて、都内のホームセンターで出会った中島と小さな恋。
人と深く結びついた先にはまた幾度も訪れる感情の嵐。

登場するどんな人間も不器用で人間くさくて、鈴子が結局この旅で何か大きく変わったわけではないけど、人とちょっと深く繋がってみると自分は自分でしかないと頷くんだと思う。

連絡手段がガラケーですごく時代の移り変わりを感じる。そうか、確かにちょうど私が大学入った前後にみんなスマホが普及していたなぁ、なんて思い出す。

中島が鈴子のことを好きなゆえに彼女に嘘をついていたこと。鈴子を自転車で全力疾走で追いかける中島。キャリーを引いてドーナツをほおばる鈴子。2人は駅に到着するが出会わない。

鈴子はこの旅で何か変わったのか。変わっても変わらなくてもいいんじゃないのか、とラスト蒼井優の爽やかな表現で掬い取られた気がする。

作品の質感がすごく良かった。