カツマ

8人の女たちのカツマのレビュー・感想・評価

8人の女たち(2002年製作の映画)
3.8
まだ30代の若手監督の一人だったフランソワ・オゾンを、一気にフランス映画界の頂点へと押し上げたカラフル&アヴァンギャルドな密室ミステリー。日本でもミニシアターブームの後半期に投下され、大いに注目を集めた作品だ。
当時のフランス映画シーンを代表する女優陣をズラリと揃え、彼女らをミニマルなミステリ劇の箱の中で美しく舞わせるミュージカル仕立てとなっており、名女優の一人一人にスポットライトが当たるような展開に各人へのリスペクトと信頼を感じる構成はお見事。
1950年代を意識したコケティッシュなファッションも美しく色鮮やか。エマニュエル・べアールのメイド姿、イザベル・ユペールの大変身など、各々の美貌が激しく火花を散らしながら、ロベール・トマの戯曲を激しく芳しく匂い立たせている。

〜あらすじ〜
1950年代の雪深いクリスマス。ある屋敷の主人マルセルが背中をナイフでひと突きされ、殺害される。屋敷の中にはマルセルの妻ギャビー、彼女の母マミー、妹オーギュスティーヌ、娘カトリーヌ、そしてメイドのシャネル、ルイーズが住んでいた。そこにその日の朝ギャビーの長女シュゾンが合流し、7人の女たちはすぐに犯人は屋敷の外に逃げたと推測した。
だが、外の門は雪で閉ざされ、電線も切られ、車も動かない。屋敷は完全な密室と化していた。そこに犯人から呼び出されたと主張するマルセルの妹ピエレットまでが加わり、8人の女たちは自分たちの中に犯人がいるのではと疑い始める。

この映画では8人の女優たち一人一人が主人公となって舞い歌うシーンが挿入されるのだが、名女優たちの歌がなかなかに下手なのがとても面白い。これぞフランソワ・オゾンが仕掛けた罠か。名女優の赤裸々な歌声はとてもエモーショナルで、アート性をマックスにまで引き立たせることに成功している。

カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユペール、フランス映画界の女王たち。そして妖艶な美貌を放つエマニュエル・べアール、フランス人形のようなヴィルジニー・ルドワイヤン、などなど今なお美しいフランス映画シーンの至宝たち。二度と実現しないであろうオールスター共演に魅了され、その豪華絢爛な宴に骨の髄まで酔わせてもらった。
カツマ

カツマ