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バニシング・ポイントのtkykのレビュー・感想・評価

バニシング・ポイント(1971年製作の映画)
3.8
ただひたすら車が走るだけのヘンテコな映画でありながら不思議な魅力を感じた怪作だった。『デスプルーフ』で最高の車映画として挙げられていたのでずっと気になっていたが、観ると本当に文字通りの車映画だった。

冒頭からカメラは風景と何かを見つめる人々の顔と乗り物を淡々と映しており、そこに物語性はほとんど感じられない。白のダッジ・チャレンジャーが颯爽と現れて以降もマクガフィンは無く、走る車をひたすらに映すだけである。それなのに、走るチャレンジャーと広大な風景は非常に魅力的だった。タイトル通り引きのショットはバニシングポイントを次々と捉え、チャレンジャーが走る土地の広大さが非常に印象的だった。

コワルスキーが現れてから若干の物語的な展開が始まると淡々とした展開と同じようなショットの繰り返しで眠くなる事があったが、終盤になりコワルスキーの名が広まるあたりから妙な盛り上がりがあった。ただただ車で爆走しているだけなのにここまで人々を惹きつけることを意外と受け入れる事ができ、コワルスキーに独特の孤独感とも寂寥感とも取れる雰囲気を感じた。そしてそれが極に達した時のあまりにも呆気ない終わり方もまた本作に合っているように思えた。

アメリカンニューシネマの作品は初めて観たが、どことなくブレッソン的な雰囲気があった。とにかく走り続ける主人公を捉える部分に物語性を極力排したブレッソン的要素があるのだと思う。
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