このレビューはネタバレを含みます
レア・セドゥの危うい脆さが美しい。
母を喪ったプリューデンス。ひとり、広い家に。父は相続の手続きでカナダへ、母を喪った悲しみをあらわす姉は家に帰らない。
自らを危険な夜に晒してバイクにまたがる。金糸を風に任せ街灯を足早に通り過ぎる後ろから、もっと早い速度で電車が追い越して行く。夜の孤独に身をあずけ、熱を交わしても埋まらない穴。
引き出しに入っていた母の補聴器に何かを揺さぶられる。わかりあえないふたりの夜は雨の最期でさようなら。柔らかな光の降る部屋に、変わらない母がいた。ごめんねが口から滑り出て、母はやっぱり優しくて。
母の補聴器を握って空を見る。
かなしみよこんにちは