デニロ

大日本帝国のデニロのネタバレレビュー・内容・結末

大日本帝国(1982年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

1982年公開の題名が凄まじいお盆映画。脚本笠原和夫。特技監督中野昭慶 。監督舛田利雄。

公開時のお盆に観た。お盆休みなどない会社だったが、仕入先、得意先は製造業で休業していたから仕事なんてあるはずもなくという理由で同僚と毎年映画を観ていた。そんな中の一本。エンドロールで五木ひろしの歌う主題歌「契り」が流れるや否や席を立った覚えがある。映画が面白くなかったのと五木ひろしの歌が好きでないからだと思う。

39年振り、そんなに昔なのか、に観たのだが映画そのものは何やら細切れのエピソードの羅列で情感も感じないのだが、笠原和夫の言う昭和天皇の戦争責任は全面展開している。主題歌「契り」の作詞者阿久悠と笠原和夫の思いが同じものかどうかは知らぬが、/あなたは誰と契りますか 永遠の心を結びますか/という「契り」の冒頭の歌詞と、篠田三郎の戦犯としての処刑の際の最後の叫びは折り重なってわたしに伝わった。

篠田三郎は、権力に引きずり込まれるよりは、と言いながら志願して海軍航空隊に入隊する。そして、「僕は死ぬときに絶対に天皇陛下万歳とは言わない。君の名を呼ぶ」と恋人夏目雅子に告げて戦地に赴いたはずだ。フィリピンで神風特別攻撃隊として出撃、米軍の進撃でジャングルを彷徨う。その過程で知り合った西郷輝彦という人物がとてつもない教条主義者で、天皇を守るためなら何でもする。海上を漂う敵兵に機銃掃射、協力者のフィリピン人を騙し討ち、何も知らぬフィリピン娘をも銃殺もはや鬼畜の如き人物。捕虜収容所で彼は篠田三郎に訴える。/大元帥陛下が我々を見殺しにされるはずがない。我々は天皇陛下の御盾になれと命じられて戦ってきた。そう命じられた天皇陛下はたとえお一人になられても、必ずわたしらを助けにきて下さる筈だ、云々。/

篠田三郎は自ら赴いた戦場で何一つできない自身の無力を知る。もはや何のために戦場に赴いたのかもわからなくなってしまう。あまりにも多くの無秩序、無念の死を見た。軍事裁判で有罪となり処刑される彼が最後に叫んだのは/天皇陛下、お先に参ります。天皇陛下万歳/。

丹波哲郎の東條英機が丹波哲郎で鬱陶しい。三浦友和と夏目雅子がなんとも美しい。

東映創立70周年“エンターテインメント・アーカイブ”特集上映・2021夏より
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