アキラナウェイ

哀しき獣のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

哀しき獣(2010年製作の映画)
3.8
「チェイサー」「哭声/コクソン」のナ・ホンジン監督作。「チェイサー」に続く長編2作目で、前作から引き続きハ・ジョンウとキム・ユンソクが主演・助演の立場を替えて続投。

暗く、重く、遣る瀬無い。
韓国ノワールの闇が深い。

中国、ロシア、北朝鮮の国境が隣接する延辺朝鮮族自治州の朝鮮族グナム(ハ・ジョンウ)は、タクシー運転手で稼いだ給料を賭け麻雀につぎ込む程、借金返済に苦しんでいた。韓国に出稼ぎに行った筈の妻からは送金も連絡もない。窮地に瀕したグナムは裏社会のボス、ミョン(キム・ユンソク)に持ちかけられた請負殺人の依頼を受け、韓国へ向かう—— 。

中国に居住する朝鮮民族、"朝鮮族"なる人達の事を初めて知った。この"朝鮮族"の物語というのが、ちょっとそんじょそこらの韓国映画とは毛色が違う。

密航船に詰め込まれた密入国者達。見ているだけで具合が悪くなりそうな程に衛生状態も悪そう。

そして、韓国で1人の男を殺し、証拠として親指1本を切断し持ち帰れば金が貰える。単純な仕事の筈。だった…。

うぇ〜〜!?
何か別の奴に標的が殺されちゃったんだけど。でも、ちゃっかり親指は貰っとけ。おっと警察が来ちまった。

もう、そこから追われる身となったグナムが走る、走る。ひたすら走る。とにかく走る。

因みに殺された男は、この作品で知名度を上げたというクァク・ドウォン。僕の大好きなおっさんだ。

警察にも追われるわ、キム・ユンソク演じるミョンにも追われるわ、中国に帰る密航船には乗れないわ、とにかく四面楚歌の八方塞がりで逃げ続けるグナム。

ミョンがまたべらぼーに強くて怖い。

アクションは基本的にナイフ、マチェーテ、そして牛骨!!

船から飛び降りたり、トラックで逃げて横転したり、ド派手な追走劇はスリル満点。

韓国人にも中国人にもなり切れない。そんな朝鮮族の悲哀をハ・ジョンウが見事に演じ切っていたし、キム・ユンソクの演技も気迫に満ちていた。

で、何とも言えないラスト。
哀しい擦れ違いに言葉を失う。