おなべ

仄暗い水の底からのおなべのレビュー・感想・評価

仄暗い水の底から(2001年製作の映画)
3.5
“水”を題材にしたホラー映画。ホラー映画の1番の怖さとは、実体がないものがさも存在するかの様に感じるような無限に膨らむ人間の想像力である。そういう意味では人間の想像力を巧みに利用しながら、そういった空間と雰囲気を作り出す《中田秀夫》監督の演出手腕は流石。特にクライマックスの恐怖映像は映画館の大画面・大音響で観たら泣き喚く子どもが多発するのは想像に容易い。

加えて《黒木瞳》さんの恐れ慄く演技と、その一方でシングルマザーの母親としての顔をリアルに演じており、ベテラン女優としての威厳を感じた。また、当時ミス東京ウォーカーのオーディションで選ばれた《水川あさみ》が出演。まだ少しあどけなく初々しい演技はとても新鮮で、そういう意味では貴重な映像かもしれない。

上述したように序盤から終盤にかけて徐々に恐怖を蓄積させ、最終的な見せ場まで持っていく腕は流石。ちょっとのCGでも使い所は抜群でセットの凝り具合もgood。しかし、強いて言うならもう少しトラウマを植え付ける様な化け物感が欲しかった。顔が無いと言えど内容的に同情の余地がある子どもの幽霊である為、ほんの少し感情移入してしまい可哀想だと感じ畏怖の念が逸れてしまった感が残った。そこでSFXを駆使してこの世の者とは思えないリアリティに富んだ地獄の大化け物を登場させると、もっと良くなった(かもしれない)…。
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