ピンクマン

ケスのピンクマンのレビュー・感想・評価

ケス(1969年製作の映画)
4.2
閉鎖的な社会環境を残酷なまでに描いた作品。逃げ場ナシ、八方塞がりの閉塞感がじめじめとした画面から漂ってくる。

主人公のビリー少年は、家が貧しく、運動も勉強も出来ない。しかし、鷹の幼鳥のケスを育てて行くうちに、少しずつ周りにも認められ、接点を持っていく。少年が一心にケスを語るシーンには、成長を感じ、胸を打たれる。彼にとってはケスが、生きる希望や自由、もしくは避難所だった。

そのケスが、ボロ雑巾のようになり、あまりにも残酷なラストを迎える。

舞台は60年代の英国だが、少年のような境遇の子も何も格別に珍しいわけではないだろう。その悲劇的な状況を訴えるように描きながらも、ときにユーモアを交え、少年を前進させたところに強いヒューマニズムが息衝いている。しかし、決してビリーに同情を誘うような作りになってはおらず、校長室に別の用件で来た子どもが、巻き添えで罰を受けるシーンなどは、震えるほどの辛辣さがある。だからこそ、この少年を応援せずにはいられない。

ヒューマンドラマの名作。
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