まじめなはじめ

バベットの晩餐会のまじめなはじめのネタバレレビュー・内容・結末

バベットの晩餐会(1987年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「旅は好きですが 私が真に愛するのは孤独です 静寂が好きだ」

どんなに美しくても人を陰鬱な気分にさせる場所ってある。
アシール・パパンすきだな〜!やっぱり明朗な人は、滑稽でも愛したくなる☺️「月と六ペンス」のストルーヴェみたい。

1871年、9月のある夜、バベットを迎え入れたふたり。パパンからのフィリパへの手紙で言及された「至高の芸術家」というのはキーワードだ、バベットが料理している姿をみると、詩人や画家や歌手だけでなく料理人も芸術家なのだと実感する。
料理はもちろん、工程、テーブルメイクやおもてなし、配膳の手際の良さまで含めて。
体は魂のしもべであれ、と唱えてからご馳走を食べるっていう皮肉。笑

毎日お祈りをして安らかに眠りに入る信者がほんとに幸せそうで、敬虔な信心を目にすると一途に主を信じる力の強さ、心の拠り所があることの重要さを感じるし、羨ましいとさえ思える。
老いは人を醜くする一方で、姉妹はいつまでも美しい。

質素を美徳とする宗派で、豪勢なフランス式の料理を振る舞う晩餐会!
面白い〜!
冒頭では有難がって食べてた姉妹のコーエスを、バベットの料理に慣れちゃって「食えたもんじゃねえな」みたいな顔してたのが辛かった〜。

全篇を通じて美食の罪を感じた。「村上龍料理小説集」で読んだな。
"美味しく"食べるために生き物を殺すことへの潜在的な恐怖、罪の意識。
みんなで賛美歌を歌った直後の牛の生首と解体された鶏たちのカット、鳥肌が立つくらいグロテスクだった。

晩餐会の進行と老姉妹の恋(?)の決着が並行してる。姉妹の生活みたいに、淡々と進んでいくのがいい。

将軍が呟くコヘレトの言葉が重かったな。
「すべてが空しい」、恋愛は自分の心に従わないと。
「ホンモノがわかる男」としての将軍の使い方が上手い!笑
料理から気をそらせるために牧師様の話を続ける信者たち、かえって心がひとつになっているようだった。
場を盛り上げて、心を満足させる。これこそ料理の真の意味か?
表情は時に言葉よりも雄弁だ。
酔っ払ってピンクになったほっぺがかわいい!笑
まかないをにこにこして食べてるとこもよかった☺️

「その女性の料理長をこう形容した
食事を恋愛に変えることのできる女性だと
情事と化した食事においては、肉体的要求と精神的要求の区別がつかない」
脳にある食欲と性欲を司る分野は隣あってるから、片方が満たされるともう片方も落ち着くみたいなこと聞いたことある。

慈悲の心、真心。正義と平和の接吻。
あちらでは今まで自分が与えたものを得られる、っていう教えは救いになるな。

「夜ごとあなたと食事をする
肉体がどんなに離れていようと構わない 心は一緒です
今夜 私は知りました この美しい世界では
すべてが可能だと」
油断してた、これはめっちゃラブロマンスだぞ。笑

「ハレルヤ!!」