めちゃ良かった。
掏摸から学士になった主人公をはじめその周りの人々が、恋愛や結婚のために出自や職業差別に翻弄され抗おうとする話。
社会の不寛容さが降りかかって上手くいかなくなる恋愛を、意地でも完結させようとするお蔦(万里昌代)の強さに感動した。
個性の強い人々の間を行き来する めの惣(船越英二)や、観客の気持ちを一身に引き受けてくれる女中?のお源(近江輝子)がかなり良いアクセントになってて最高。
中盤の二人の別れのシーンと、たえこがお蔦を訪問するシーンの二つが特に感動的で、それぞれの人物のバックグラウンドや思いを感じさせながら絡んでいく会話のセリフひとつひとつが秀逸で素晴らしい。
「あなたの意地を通させてあげる」「最後に夫婦として顔を見せて」「あの人は芸者のまことをわかってないわ」など胸にくるお蔦のセリフの数々…(別れに際して出てくる言動がキスではなくて「顔を見せて」なところにぐっとくる)。「芸者を売女と呼ぶのはやめて」というド直球のセリフをしっかり入れているのもよかった。
構図が不思議で、何箇所かのシーンで人物を真ん中ではなく画面の下に据えて撮ったり、別れのシーンではほぼ全てのカットの手前に梅の枝を写り込ませるといった構図のとりかたが面白かった。どのシーンも止めた絵がきまってる。
しっかりした構図に呼応する顔の強さが印象的だった。