我が道を行くライオン

TAXiの我が道を行くライオンのレビュー・感想・評価

TAXi(1998年製作の映画)
1.5
昨晩、私の中で一生忘れ得ぬ出来事が起きた。一人の友人に裏切られたのだ。

事件当時、私は井上、吉田、奈良と四人でアパートの一室にいた。窓の外では桜が散り始めていた。東北の春は寒暖差が激しく、夜にはまだ冬の名残を感じさせるほど風が冷たく吹いていた。

四人は冷えた体を温めようと、一度家を出て近くのラーメン屋に赴いた。麺をすすりながら、我々は会話に花を咲かせた。四人とも独身であり、身を寄せる所のない苦労を語り合った。互いの人生観を語りつつも、くだらない冗談を挟めるこの仲が心地良い。会話を続けていると、将来への不安も飛び去りそうだ。私は三人を心底敬愛していた。

アパートに戻り、我々は「大乱闘 スマッシュブラザーズ」を行なった。マリオ、ピカチュウ、ゼルダなど、任天堂の人気キャラクターが登場し、それらを実際に格闘させる対戦ゲームだ。家庭用ゲームであるから、操作は簡単で初心者でも楽しめるものだ。いつも私は「楽しさ」を求めてこのゲームを行なっている。無論憎しみや怒りは存在する余地のないゲームだ。1試合行い、「楽しさ」を十分に味わったところで今日は解散する予定だった。しかしそこで事件は起きた。

試合終盤、井上がアイクの禁止技「カウンター」を使って私のマリオを倒したのだった。「カウンター」は我々がスマブラを行う中でタブーだった。理由としては、人を欺く上に傷付けるという卑劣な技だからだ。それを井上が、何の躊躇もなく使用した。

私は目を疑った。胸がざわつき始め、鼓動が早まり、息が苦しくなった。体が震えた。船の帆が強風にはためくような、激しい震えだった。愛する人に裏切られた。その事実は私を絶望の淵に追い込んだ。

私は自宅に帰った。夢破れ、喜びも失い、何の希望も期待もない。そんな中、何となくこの「Taxi」を観た。映画とは言えないほどのシロモノだった。こう思うのも、井上の裏切りが原因だろう。井上はこの映画の脚本家のリュック・ベッソンと元カノの床症に今すぐ謝るべきである。