すずき

シークレット・サンシャインのすずきのレビュー・感想・評価

3.3
亡き夫の故郷、密陽に移り住んだシネと幼い息子のジュン。
誰も知り合いがいない場所で新しい暮らしを始めようとするシネと、彼女に恋心を抱き、何かとお節介を焼く男ジョンチャン。
しかしある日、ジュンが誘拐されてしまい、事件は最悪の結末を迎える。
ジュンを失い、深く傷ついた彼女の心を救ったのは、宗教だった。
やがて笑顔も戻ったシネは、神の教えを体現する為に、逮捕された犯人と面会し、彼を許そうと心を決めるのだが…

クリスチャンの多い韓国の、宗教的意味合いが強い骨太ドラマ。
ともすれば宗教批判とも受け取れる内容。
ただ、安易に主人公がカルト宗教に騙されていたり、金品を貢いで不幸になったりする展開ではなくて、一度は神を信じる事によって彼女は確かに救われるのだ。
だが、犯人と面会するシーンで、犯人の語った言葉が、彼女に酷く動揺を与える。
それは、神を信じていた故の矛盾。
神は全ての人を赦しになられる、その「事実」が彼女を再び傷つけた時、彼女は神を信じることは出来なくなり、背徳的な行動へと向かわせる。
宗教の持つ矛盾を描く、その切り口は鋭く、そう来るか、と唸らされた。

韓国映画らしい陰鬱なテーマだけど、ソン・ガンホ演じるジョンチャンの存在が清涼剤のよう。
おかげであんまり暗くならずに見られた。

ラストは僅かな希望の予感を感じさせるものなんだけど、彼女を取り巻く環境は何も変わってないのよね。
彼女が救われるきっかけになった出来事があったわけでもない。
クライマックスのない展開は、唐突な幕引きにも思える。
それは文学的な感じもするけれど、私はやっぱり映画的なストーリーの「締め」が欲しいかなー。