ピッツア橋本

年をとった鰐のピッツア橋本のレビュー・感想・評価

年をとった鰐(2005年製作の映画)
4.1
"年季か、狂気か。はたまた摂理か"

エジプト産、孤高の強者の老いたワニの放浪を描いた大人の絵本童話チックな短編ファンタジーアニメ。

テーマは性と理性の狭間、だろうか。本人が望まなくとも"選ばれし者"として生きながらえたワニの悲哀と業を、まんが日本昔話風の優しい語りで進行していくから怖い。
と同時に何か肩の力が抜けた、俯瞰した感じで物語を追えるのが興味深かった。

やはり本作のキモである恋人タコとの逢瀬。
ここでは動物的摂理と、哲学的神秘が混濁していて面白かった。
これはシリアルキラー的発想じゃなくて、動物としての葛藤や達観であろう。
きっとワニの暴君という見方もあるだろうが、ここには自分は純粋に切なさとやり切れなさを感じた。

ラストは最近、アリアスター監督作品観てるから『ミッドサマー』がオーバーラップした笑
人は往々として、抗う事を辞めた先に本当の敬意と調和があるのだろうか。
このワニの生に強烈な不公平感を感じた自分にはまだまだ精神の修行が必要という事なのだろうか?苦笑

12分の中に、色んな死生観が垣間見える、興味深い短編アニメーションでした。
ピッツア橋本

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