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犬神家の一族のnamのレビュー・感想・評価

犬神家の一族(1976年製作の映画)
4.1
「緩急の演出が見事!大富豪の相続をめぐる入り乱れる愛憎劇」

僭越ながら初の市川崑監督作品。
L字に配列されたテキストや早すぎるカット割りなど庵野秀明監督や新房昭之監督という好きなアニメ監督達にも受け継がれていると聞いて観たかった作品。

有名なあの死に方や白いマスクのビジュアルインパクトのイメージが先行してましたが、146分という長尺ながらミステリーとしての結末への興味を持続させつつ、飽きさせない構成で間延びせず楽しめました。

その後、解説などを拝見すると市川崑監督の巧みな演出が随所に影響を与えていたという事で二重に楽しめました。

ミステリーという陰惨になりがちな題材を
合間にコメディ要素を入れたり、会話では早い編集のカット割などで飽きさせない工夫をしているというから驚きでした。

会話だけで退屈にならないようにコミカルなシーンにあえてしたり、謎解きのシーンでは原作では一同に集めてまとめて解説していたのをシーンで分割して、段階的に明かす事で全く退屈しない映像になってました。

探偵ながら飄々として掴みどころのなく、ちょっと頼りないながらも母性本能をくすぐる石坂浩二さんの金田一耕助像も素晴らしく、監督的には天使のような存在で客観的な立場から物事を観察して、最後に謎を解くという俯瞰的な立場で演出されているというのも納得の事件や当事者達の距離感が絶妙だからこその人間ドラマも楽しめました。

この流れで5作ある続編シリーズも観てみようと思います。
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