LudovicoMed

13FのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

13F(1999年製作の映画)
3.9
エメリッヒプレゼンツ〜99年に創造されたもう一つのマトリックス。

マトリックスがSF界に起こしたビッグバンの影に隠れてローランドエメリッヒも製作陣に回り、ひっそりと仮想現実SFを作っていた。
ただ、こういった不確定な記憶プロットのマトリックス型近未来は、JMやダークシティなんかが、99年以前から挑戦していたようだ。

そして本作は、今見てもマトリックスまんまだが、それ以上に実はブレードランナーからの影響をもろに受け、ほぼ下敷きにプロットをなぞらえている。
人間のコピー的存在が、世界の成り立ちに気づき創造主に襲いかかるというフィリップKディックチックな考察へと踏み込み、そもそもこの映画のテイストがフィルムノワールという舞台で物語られている。
更に主人公の住む部屋のデザインが、デッカードのマンションルームを完コピされたオマージュも忍ばせている。

結果、仮想現実というプロットの元、単なるブレードランナーのオマージュムービーの枠を超え、マトリックスが描いた仮想現実論を逆の視点から暴きだす。なんとプログラム自体が"赤いカプセル"の存在に気づき手に入れようとする。
すると更なるマルチバースが我々の世界に襲いかかってくるのだ。
驚くことに、一見悪役ズラのマトリックスで言う"サイファー"ポジションの人物こそに、本作の共感ポイントが隠されているのです。

そして、マトリックスが圧倒的SFビジュアルで仮想現実物語を紡ぎ出す一方、ひたすらフィルムノワール、明らかにロサンゼルスで物語る本作は、より近い世界の物語に感じられる。
マトリックス二番煎じに見えて、巧妙な仮想現実論とアッと驚く展開が用意されています。
これは、VRカルチャーが普及しつつある現代の目線から見ると、とてつもなく興味深い作品であった。
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