心象風景。
イヴ・アレグレ監督作品。
私は個人的に、他人の心象風景を観せる作品が好きである。
古くはジャン・エプスタインの「フォトジェニー」で知られる表現方法であるが、本作も全編に渡り、その手法に則った作品である。
本編は前後半を通じ、雨のそぼ降る季節外れの避暑地が舞台となる。
そしてこの「寂しく侘びし気な砂浜」が、本作の主人公・ピエールの作中時点での心象風景を表している。
タイトルに在る、『美しき小さな砂浜』としての描写は、作中終ぞ映されない。
それは彼が過去、其処で見た風景、罪の無い、汚れていない目で見た風景としてしか捉えられていない。
そう云う意味では先述した心象風景の描写も作中現在での物でしか無く、彼自身が抱き続けたこの砂浜の風景は、我々鑑賞者の想像に任される。
陰鬱な砂浜を画面上に観ながら、美しい晴れた砂浜を想像させられる─、何とも善く練られた構成である。
物語は、悲劇にて終えられる。
其の哀愁が、先に挙げた想像上の「美しき小さな砂浜」を、更にまぼろしの様に儚い物にし、切なさを募らせる。
秀逸なラストカットと云い、もっと評価されても良いのでは、と感じられる作品である。