垂直落下式サミング

子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつるの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.3
若山富三郎主演の子連れ狼シリーズ第一作目。
まさに武芸百般という言葉がふさわしい若山富三郎の身のこなしが堪能できるシリーズだ。
士道を捨て、冥府魔道をゆく剣鬼となった拝一刀と、その子である乳母車に乗った大五郎の復讐の旅を描く。子連れ狼の成り立ちを描く作品であり、一作目にして、これからシリーズが続いていくことを割り切った作りだ。
キャラクター紹介と世界観説明に多くの時間を使っているので、続編があることが前提の一作目にありがちなつまらなさは確かにあるが、映されるものが色々と強烈なので気にならない。
まず主人公が、子供の自刃を介錯するというとんでもないシーンではじまる。拝一族は、幕府より公儀介錯人という役職を仰せつかった名家であり、一刀は位の高い人物の斬首を生業としてきた男なのである。
その地位を我が物とせんと画策する柳生烈堂の謀略によって妻を殺され、さらには公儀反逆の汚名をきせられた拝一刀は、冥府魔道に落ち、復讐の旅に出ることを決意する。
その時、彼は幼い我が子、大五郎の目の前に刀と手鞠を持ち出してきて、この刀を選べば父の子として復讐の魔道をともに歩ませよう、こちらの手鞠を選べば母の子としてお前を殺し三途の川へ送ろう、さあ選ぶがいい!選ぶのだ大五郎!と何もわからない乳飲み子に命の選択を強いるのである。このあたりは相変わらずの小池一夫原作であり、頭がおかしい。
何やら画面全体もギラギラしており、ここは普通の精神では生きられない冥府魔道の世界なのだということが際立っている。
柳生烈堂への復讐を誓う拝一刀が、「許さん、うぬら柳生を断じて許さん。表柳生の水の川、裏柳生の火の川、うぬらがいかに権謀術策の二川で迫るとも、我は白道を進み、屍となっても、骨となっても、この恨み、この恨み晴らさいでか。」という台詞を言うと、火と水を切り開いた道を進む拝一刀の映像に切り替わる。キャラクターが言っていることを、そのまま絵にした非常に頭の悪いシーンだが、当時の合成としてはかなりケレン味があったと思う。
東映スター若山富三郎の代表作にして、大映の子会社である勝プロが制作、大映倒産後は松竹の撮影所で撮影され、最終的には東宝映画として配給されることになる奇妙な映画だ。