イチロヲ

モスラのイチロヲのレビュー・感想・評価

モスラ(1961年製作の映画)
4.5
水爆実験を主導するロリシカ国の人間が、実験場として利用するインファント島から双子の小美人を拉致してしまう。日本の国際的立場を投影させている、東宝特撮映画。登場する架空国「ロリシカ」とは、ロシアとアメリカのアナグラム。

日本の調査隊(フランキー堺、香川京子など)は、小美人を土地に返そうとするのだが、ロリシカの調査隊(ジェリー伊藤など)は、小美人を実験データとして採取しようとする。これは、原爆の開発に携わった科学者の「モノの考え方」の投影とも捉えられる。

海上で姿を消した幼虫モスラがダムの底から登場したり、ロリシカに帰国したジェリー伊藤が日本語のラジオを聞いていたり、そもそもジェリー伊藤が言うほど悪者ではなかったり、重箱の隅はあちこちに見られるのだが、どれも擁護できる範囲内といえる。

インファント島のエキゾチックな合成映像、ザ・ピーナツの呪術的な歌声、精巧に作りこまれたミニチュアと破壊の美学、そのすべてに中毒性が備わっている。小美人を迎えにきただけなのに、自衛隊の攻撃に晒されてしまう、ただただ可哀想なモスラに感涙必至。
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