P1島

モスラのP1島のレビュー・感想・評価

モスラ(1961年製作の映画)
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脚本に関しては、粗さばかりが目立った『空の大怪獣ラドン』なんかと比べるとずっと良いものだと思う。初代『ゴジラ』にも通じる社会派な要素もありつつ、個性豊かで記憶に残る登場人物も豊富で、単純に「怪獣が空を飛ぶ」以上の面白さがある。平成モスラと違って、大人の鑑賞にも耐える。

平成ゴジラ・モスラシリーズから「インファント島」という名前は幾度となく聞いているけど、ビキニ環礁をモデルにしているとは知らなかった。
ただ、せっかくアメリカの原水爆実験を風刺する内容がありながら、それが物語の中核に据えられていない。物語の中核となるのは金儲け主義ビジネスマンのクラーク・ネルソンによる小美人の拉致と、彼から小美人を奪い返そうと奮闘する学者・新聞記者たちとの争いであり、インファント島の島民たちの命を危険に晒し、そのことを隠蔽し続けたロリシカ国(ロシア+アメリカの安直なネーミング…)の罪はほとんど問題にされない。
終盤の方はむしろ日本とロリシカ国が協力してネルソンを追い詰めるという展開になるため、ネルソン一人が悪者という印象が余計に強まる。

新安保条約締結の翌年に作られた日米合作映画であることを考えるとアメリカを悪者にはできないという事情があり、これでも精一杯やった方なんだろうとは思う。でも、「アメリカ」の名を直接出さずに痛烈にアメリカを批判した『ゴジラ』のような作品があることだし、この映画も別のやり方があったのではという気はしてしまう。


映像に関しては、怪獣映画初のワイドスクリーンがとても効果的に活かされていて素晴らしい。モスラ幼虫初上陸の場面では、それまでの怪獣映画には見られなかった、空撮映像のようなロングショットで侵攻の様子がよく分かるし、ラストで成虫が人間と接近する場面では、その圧倒的スケールが強調される。

同じく空を飛ぶ怪獣ということでやはり『空の大怪獣ラドン』と比べたくなるが、特撮でも全く引けを取らない迫力。特に成虫の起こした風で車がエアーくじの紙みたいに巻き上げられるショットが印象的。それと、幼虫が東京に侵攻してくるシーケンス。シンゴジの庵野秀明監督はゴジラ第二形態を、「地面と顔が近い怪獣」というイメージで構想し、「帰ってきたウルトラマン」のツインテールを参考にしたと語っているけれど、モスラ幼虫もやはり同じような怖さがあると思う。


2019年公開のレジェンダリーゴジラ2作目は、モスラの扱い方が一番気になるし、楽しみでもある。そして、今年公開のアニゴジ最終章、モスラ出て欲しいなぁ(切実)
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