ニャキヤマ

炎上のニャキヤマのレビュー・感想・評価

炎上(1958年製作の映画)
5.0
誰もが知る名作の「金閣寺」の映画化。
ってよりも近代日本文学を代表する1作と言っても過言ではありませんよね。

原作は読破済みどころか大変好きな作品なので、ずっと本作は知っていたのですが「題名が違うし、三島側からNO!を突き付けたのだろうな〜」と敬遠していた所、あるきっかけ(ヨコになりながらネットサーフイン)で、三島は乗り気で実は金閣寺からクレームが入って、、という事情を今さら知り、急いで鑑賞しました。

市川崑監督、”雷さま”こと市川雷蔵主演で大変楽しみました。
原作では、”美”に対して極端なコンプレックスを持っている主人公を、流麗な文章で物語を紡ぎ出す歪さ(矛盾?)が大変好きです。
しかし本作は「何故主人公はあれだけ好きだった金閣寺を放火したのか?」という展開は原作同様なんですが、もっと「誰もオレのことなんてわかってくれないか、、、」にフォーカスし、敷居が低い作品になっているなと感じました。


終盤高名な僧と同席する機会があり、主人公の見習いの溝口が懇願します。

「ぼくおかしいですよね?吃音もあるし」
「いや君は必死に頑張っている若者にしか見えんよ」
「そんなことないんです!!僕は、、」
「何にも考えないのがいちばんいい考えだよ」

心、ポキーって音が画面を飛び越えて来そうでした。

原作は世界的に評価されているし、本作も当時時代劇の大スターであった雷さまが反対を押し切って出演を決めた背景もあって、小品とは決して呼べない作品です。

しかし、主人公の溝口が金閣寺を偏愛するあまりに"誰のもの"でも無くした姿勢のように、時代を超えて僕は本作に凄く(当時は原作にも)共感をしてしまって「あ、オレの映画だな」と改めて感じてしまいました。



といった僕が感じた↑様なメンドクセー事をわずか約90分で描き切っているので、非常に素晴らしい映画化ではないでしょうか。
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