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炎上のumihayatoのレビュー・感想・評価

炎上(1958年製作の映画)
5.0
変わるものと変わらぬものがある。
というのももはや1人の人間が「これは変わらん」と思ってるに過ぎないのですし、
その一個人の価値観をわかってくれなどと喚いたところで、到底無理な話なのです。

映画でスポットが当てられている国宝の寺。原作だと金閣寺ですが、それをどういった意識で大切かと思うかは、今や個人個人の考えに委ねられてしまってるわけです。
歴史的にか。商売的にか。誰かとの思い出としてか。自分の居場所としてか。

主人公は、自分の思う綺麗な寺はそのままに、世の中はどんどん世俗化して汚い物で溢れていき、寺もそれに巻き込まれようとしている。
ならこの寺も汚される前に燃やしてしまおう。という形で奇行に走ったのだとおもいますが

戦後、価値観や美意識の多様化で、一つのものをみんなで重んじれなくなったという時代背景もあるかなと思いました。
すこし右寄りな感想な気もしますが。

主人公の吃りや、仲代達矢演じる足に障害をもつ戸狩の存在なども、この作品のテーマを二重三重に深めている。
他人と違うがゆえに「誰も自分をわかってくれていない」と考え、奇行に走るのは、僕としては自分勝手な傲慢とナルシズムだと感じるが、それが若さというものだろう。
若さが手放しで放り出された最初の時代だったんだろうなと思わずにはいられない。
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