おむぼ

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド 最終版のおむぼのレビュー・感想・評価

3.1
駿河屋で買った中古DVDを3年弱寝かせていた。
そういうのは本当に良くない。
でも、オリジナル版を先に見ておいて本当に良かった。

見て、この映画のコンセプトは『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』をいかにして90年代のエンタメ商業ホラー映画に近づけるかの実験だったのだろうと思った。
『ゾンビ』のダリオ・アルジェント版と似た発想ではある。
その結果、本来のドキュメンタリーのように没頭できる魅力が削がれてしまっている。

冒頭と最後に新撮の追加シーンがあり、オリジナル版で最初に現れる生ける屍おじさんが実は極悪人なので電気椅子で死刑になったという出自が明かされ、オリジナルキャストが演じる彼が棺から目を覚ましたり、新キャラクターとしてそれでも見捨てず祈りを唱えるキリスト教の神父が出てくる。
神父は安っぽくて胡散臭い見た目で、胡散臭いことしか言わないので、超常現象を扱うオカルト番組風味である。

このシーンの追加でかなり寓話性が高くなっていた。
でもって、よく思い返してみれば『ゾンビ』でピーターが誰かに言っていた

「地獄が人でいっぱいになると死者が地上で溢れかえるんだ」

という劇中で一度だけ発された戯言かもしれない一言を拾ったものになっていると思った。

正直、このゾンビの発生の設定は本編のテレビ放送で言及されているNASAが金星を探査する衛星を爆破したせいで放射線が地球に降り注いだ可能性よりも、ましてや『ゾンビ 日本初公開版』の冒頭で配給元で勝手に付け加えられた隕石が爆発するよりも好きだ。
人の心の闇として描かれたほうがマジックリアリズム的でずっと良い。

ただ、こうして作られた今回の説明の映像は、かなりばかばかしかったのが残念なところだ。

あとの主な変更点はジャンプカットのあったシーンの削除と、生ける屍の集団がぞろぞろと歩くシーンを『ゾンビ』以降のゴア描写が増した人達に入れ替えたことと、サウンドトラックの入れ替えである。

ジャンプカットを無くしたことによって保守派の男に妻が「あなたはいつも正しい」と皮肉を込めて言い返すシーンが無くなったのは少し残念で、ゴア描写増加も生ける屍の集団だけが映るシーンに限定されているので繋がりが微妙である。

新しいサウンドトラックはストリングスやティンパニがデジタル臭い似非オーケストラサウンドで『死霊のえじき』を通り越してプレステのゲームのような雰囲気だった。
会話シーンの劇伴の量がかなり増えていることで猛烈に安っぽくなっている。

そしてゾンビに対峙するシーンはオリジナルのサウンドトラックを使っており、かえって全く馴染んでいない。
中途半端が最も良くないことだと思った。

DVD映像特典で『ダンス・オブ・ザ・デッド』と題された3分ぐらいのMADムービーが入っていてグランジな雰囲気のエフェクトが猛烈にプレステのゲームっぽい。
というか『バイオハザード』っぽい。
それはそれでけっこう好き。

新撮部分のメイキング映像は字幕も無いし早回しで見たがダラダラしていて長いし虚無。
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