素潜り旬

大虐殺の素潜り旬のレビュー・感想・評価

大虐殺(1960年製作の映画)
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『大虐殺』
関東大震災直後と虐殺(軍人やべえなあと思わざるをえない描写ばかり)を丹念に描き、大杉栄が見せ場なく死に、中濱鉄と古田大次郎が混ざった役を天知茂(役はどうあれ、くそかっこいい)が演じ、『菊とギロチン』が参照してるであろうシーンが多々あるというだけの映画だったけれど、未DVD化なため伝説になっていた映画。セクシーなシーンが一切なく、無駄に硬派なのがギロチン社の滑稽さを強くしている。


ちなみに『菊とギロチン』が参照してるであろう場面は、和久田なる人物が大杉栄の演説中に逮捕されるシーンと、「女が守れなくって〜」の部分。まじでこんな映画から良いとこ盗んでるなって思う。


暗くじっとりした質感のため、失敗が陰惨になってしまう。本来、本気の失敗は笑いに転ずる可能性を孕んでおり、ギロチン社を題材にした作品(映画、小説、伝記など)はどこをどう落とすか、どんなふうに失敗を描くか、がキモになるのだが、『大虐殺』は失敗している。笑 実は『日本暗殺秘史録』の古田大次郎パートも似たような質感になっていて、これが昭和のギロチン社の映画の空気とも言えるのかもしれない。


瀬々敬久監督は、この昭和的質感を逃れるために、女相撲を登場させて、見事な青春群像劇に仕立て上げたのだろう。
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