ただ守りたいだけ。。
精神を患うシングルマザー琴子の超主観的世界。
彼女の心の中でいったい何が起きているのか。
そんな中で人を愛することができるのか。
いきなり泣き叫ぶ、情緒不安定な超危険女(のように見えてしまう状態)の、外側からはうかがい知ることができない心の中を視覚化して描く。
いつか観ようと思っていたのですが、
絶対に何かしらの精神を持っていかれること確実だったので何度も躊躇していました(^^;
「日常世界の中で「善」と「悪」の二つの状況が同時に見えてしまう」
という現象に悩まされている琴子。
仮に人から善意を受け取ったとしても、一方で殺意や悪意の結果が同時に迫ってくるようにみえるわけです。
毎日が落ち着かないですよそれは笑
人間不信にもなりそうです。
「現実」と「自分の中で起こっている出来事」の境界があいまいになる中、
彼女の想いは一つ。
ただ息子を守りたいという気持ちだけ。。
しかしその思いが高まれば高まるほど、強迫観念の恐怖から暴走してしまいます。。
なかなかしんどいです(^^;
幻覚と強迫観念の世界を、錯乱する理由とともに追体験できます。
一方で、客観的な状況も描かれているので、精神的にも生活的にも、追い詰められている母子というのが不憫でしかたありません。
恐怖感の根源は子供を思う優しさ。愛情。幸せ。それを失うこと。
しかし、母の守ろうとする愛情の行動が、子供をさらに危険な状況へと無意識に追いやっているという。。
これは嵐のように巻き起こる内側の世界での結果なのでこの状況下の由来と苦しみはだれにもわかってもらえません。
「できない!できない!」と精神不安に陥り泣きながら、片手で危なっかしく赤ちゃんを抱き、同時にさらに片手でフライパンを持ち野菜炒めをジャンジャンと作らなくてはならない状況(どんな状況だ^^;)が物語っています。
いえることは、傍から見て、
赤ちゃんが危ないったらない(^^;
恐怖感としてはそれに尽きます(^^;
こどもの不注意で、はらはらすることもありますが、子を思い行動する母心自体が余計に恐怖になるという皮肉。
子育て中の方にはこのあたりの描写ははかなりしんどいかもしれません。。
直接的には悪夢探偵2の変奏ともおもえましたが、描かれる「自分でも制御できない爆発的な力で他人を傷つけてしまう恐怖感」
これは塚本監督作品に昔からあるモチーフなので、描かれる先のものは同じといえますが、壊してしまう恐怖に立ち向かう「心」の行く末は、これまでの塚本映画にはなかった境地といっていいかもしれません。
個人的にも恐怖とはなにかを自覚できる映画でした。