土偶

KOTOKOの土偶のレビュー・感想・評価

KOTOKO(2011年製作の映画)
4.5
脂肪が全くなく頭が大きく見えるくらいに痩せて、目力だけで生きてるような摂食障害にしか見えない女子のジャケ写というか、タイトル画像のこの映画がずっと前からアマプラさんの「あなたの好きそうな映画リスト」にチラチラ出てきていて気になっていたのだが、知人もここでフォローしている方も誰もこの映画について言及しておらず「オモロないのかも」と観るのに二の足を踏んでいた。
しかしながら塚本晋也氏の『野火』を見ようと色々調べているとこの映画も塚本氏の監督作品だと知ってその前に観ることにした。
で、これはもう凄いモノを観た。としか言いようがない(と言いつつ色々書くけど)。これに目を留めた私自身を褒めてあげたい!
冒頭から最後まで痛すぎて辛すぎてしんどい。リスカのシーンとかなら薄目で見られるけど絶叫とか絶望とか暴力とか急に来るから怖すぎる。
主演であり原案であり、美術、音楽も担当したCocco氏については私自身はよく知らないが、過去にCoccoが大好きだという人を知っていてこの映画のKotokoは確かにその人と重なるところがある。
彼女の体型や虚無の目で明るく振る舞う変なテンションを見ていると胸がギュッとなる。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のBjörk氏もそうやけどなんかこう尖ったミュージシャンが救いの無いような映画の主演をすると奇跡のような作品が生まれるのか??
そういえばCoccoが好きなあの人はBjörkも好きだったな。何か通じるものがあるような気もする。
塚本晋也氏といえば「鉄男」が圧倒的だったが、自らを傷つけるだけでなく愛する人をも傷つけざるを得ないこの映画の主人公kotokoもシングルマザー版の鉄男とも言える。塚本氏が映画の中で描く人間存在の持つ「痛み」は肉体的にも精神的にもそして心にもゴリゴリ伝わって来て観る者の何かをえぐる。今思い出しても身体中がゾワゾワする。
塚本晋也氏の「鉄男感」とCocco氏のパーソナリティと美的感覚が上手く溶け合ったこの映画は圧倒的なアートであった。
映画の中の田中がKOTOKOに対してそうであったように、KOTOKOが息子に対してそうであったように、全然大丈夫じゃない時には「大丈夫」と言うしか選択肢はなく、そしてそれは「大丈夫になりますように、大丈夫でありますように」といった1つの祈りの形だ。自分自身は全く大丈夫でなく、自分自身についてはどうでもよくても、愛する人のためならそう願えるしそう言えるのだ。
この映画を見て私も昔によく「大丈夫」って言っていたのを思い出した。
映画の中の田中氏のように何の根拠もなく「大丈夫」と言い続けた結果、私は生きてるし多分あの人も生きている。
な?大丈夫やったやろ?めでたしめでたし。
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