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ヤコブへの手紙のtakのレビュー・感想・評価

ヤコブへの手紙(2009年製作の映画)
3.3
75分という短い上映時間、実質的な登場人物は盲目のヤコブ牧師と元女囚レイラ、それに郵便配達人のほぼ3人だけ。予算もあってのことかもしれないが、このシンプルさが余計なエピソードを挟まないだけテーマを貫く上ではよかったと思われる。

殺人で刑期を務めていたレイラは、恩赦の申請があったことで釈放されることになった。牧師ヤコブの助手を住み込みでする仕事を勧められる。ヤコブ牧師は盲目の老人で、彼宛に届く手紙を音読するのが彼女の役割だった。単調な日々と盲人の相手に嫌気がさした彼女だが、手紙が途切れてしまったことで落ち込む牧師の姿に次第に心に変化が起きる。

自分の役割とは何なのか。誰かの役に立っているのか。牧師は手紙で依頼のあった誰かの為に祈るというだけの役割。だが、その手紙が途切れたことで自己存在が自分の中で危うくなってくる。つまり、自分自身も誰かに役に立つことで救われていたことに気づかされる。そして手紙、と称してレイラが自分について語り始める。そして牧師から彼女が耳にする真実。その結末が描かれるクライマックスは、お互いにとってまさに魂の救済とも言える静かな場面。現実世界をしばしの間忘れさせてくれ、見終わった後は少し優しく人を見ることができるような気がする。そんな映画。

北九州映画サークル協議会例会にて鑑賞。
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