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ソナチネのmrhsのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.5
発想自体が微妙(ということは北野武自身の手掛けた脚本に問題があるのだろう)と感じる場面が正直かなりあるのだが、映像としては実に見事だという辺りにこの映画の、というか北野武の凄さがある。

物語上の必然性の有無ではなく、"こういう場面が撮りたい"という監督の欲望で撮られた場面ばかりが並んでいて、しかもその大半が映画的な発想では出てこなそうなものであるというか…。

ところどころ顔を出す日本の芸能界(お笑いあるいはバラエティ番組?)的なノリ、殺し屋が花をばら撒いたカットに飛んだフリスビーのカットを繋ぐマッチカット(なのか?)の強引さやスローモーションなど微妙な部分もかなりあるのだが、一方でカメラを置く位置は意表を突いたもの(例えば踊っている人を真上から撮ったカットなど)まで含めてほぼ完璧だと思う。

またカメラワークで魅せるという感じの映画でもないが、横移動が極めて印象的だし、夜に花火でサバゲーのようなこと(?)をやるシークエンスの美しさには忘れがたいものがある。ただ繰り返すが全ての場面がこれほどに上手くいっているという訳ではない。

最後に付け加えると、例によって久石譲の手掛ける音楽はかなり微妙なのだが、見事な映像なのに映画として完璧という訳でもないこの『ソナチネ』に、スティーヴ・ライヒではなく、まるでマイク・オールドフィールド(=エクソシスト!)を思わせる久石譲の音楽は意図せざる形でほぼ完璧に作品に寄り添っていると思う。
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