ひでやん

ソナチネのひでやんのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.5
沖縄を舞台に、死へと向かう男たちの姿をユーモアに描いたヤクザ映画。

そこはかとなく胸をざわつかせる久石譲の旋律で始まり、みかじめ料を払わないノミヤを冒頭で恫喝する。

その男は、暴力団北島組の傘下である村川組の組長。ドスの効いた声を響かせ、犬猿の仲である幹部の高橋を便所で締め上げ、ノミヤの男をクレーンで吊るし、東京湾に沈める。

大都会東京を舞台に、血で血を洗う抗争が始まると思いきや、友好関係にある中松組を支援するため沖縄へと飛ぶ。

中松組と揉めている阿南組とスナックで激しいドンパチが始まり、抗争の火蓋が切られるが、加速度的な抗争に急ブレーキがかかり、緊迫した時間が弛緩する。

白い砂浜と突き抜けるような青い空、美しい海をバックに繰り広げられるのは命懸けのゲームに相撲、落とし穴に花火。

アロハシャツを着た男たちは、血生臭い世界を忘れて夏を遊ぶ。彼らの顔は少年のように穏やかだ。

島の踊りでおもてなしをする渡辺哲。
妙に息の合う寺島進と勝村政信。
アロハシャツが似合わない大杉漣。

ヤクザ映画を嘲笑うかのように夏と戯れる男たち。しかし、裏切りの凶弾が額を撃ち抜き、再びヤクザの世界に観客を引きずり込む…。

エレベーターという狭い空間で迫力ある銃撃を繰り広げ、海の青と燃えさかる炎の赤というコントラストで憤怒を浄化させる。

東京という1楽章で始まり、戯れの2楽章へ移り、最終決戦の3楽章を奏でるソナチネ。その旋律には監督の北野武と芸人のビートたけしが緊張と緩和を奏でて同居する。

夜の海を映し出す青の世界が美しい。砂浜で銃口をこめかみに当て、夢で撃ち抜き、ラストで現実にする演出が素晴らしい。

「ヤクザ辞めたくなったな、何かもう疲れたよ」

序盤の台詞が浮かぶラストシーンだった。
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