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アイズ ワイド シャットのkのレビュー・感想・評価

アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)
4.2
キューブリックの遺作。今作のテーマはそのままキューブリック本人の遺言であると、妻が語っていたそうです。

当時実際の夫婦だったトム・クルーズとニコール・キッドマンを起用しただけあって、夫婦のお話です。表現が過激なことでも知られる作品ですが、それ以上に難解な映画ということでも知られている今作。さすがはキューブリック、ストーリーだけでなく、カメラワーク、小道具、全てにおいて挑戦的に来ましたね。で、さらに、いやらしいのがストーリーを追っていると意外に分かってしまうので、なんだ分かりやすいじゃん! と錯覚してしまうんです。しかし、キューブリックは謎そのものを謎でカモフラージュして、そもそもの謎にすら気づかせない仕組み、演出をしている訳ですよ。

今作の一つのテーマとして、「夢」が挙げられるんですが、作中ではこの「夢」への導入が明示されていないので、映像的には非常に分かりづらいんです。でも、たしかに「夢」の中にいる際の影響は、細かい箇所に見受けられるんですが、それに気づかなくても話として成立してしまうから憎いですキューブリック!

そして、ニコール・キッドマンの最後のセリフ。「夫婦」を描く上で、実際の夫婦を起用したキューブリックの意味が込められています。稀代の名匠の遺作のラストがこの言葉で締めくくられることは良い笑い話です。

(町山さんの解説、読破済み)
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