たかはし

アイズ ワイド シャットのたかはしのレビュー・感想・評価

アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)
4.4
何故だか避けてきたキューブリックの遺作。
ついに観ました。"神映画"だった…!
「もっと早く観ておけばよかったシリーズ」入り。

冒頭の舞踏会から強烈な会話劇が続く。
この一連のシークエンスが、本作における最大の見どころかもしれない。
ニコールキッドマン演じるアリスのいやらしくも怪しい喋り方。素晴らしいです。

この段階で既に主人公夫婦の危うい関係性が明らかになり、それどころか、「結婚」というシステム自体の破綻すら示唆している。
そして、これこそがこの映画の主題だと僕は見ています。

舞踏会の男が言うように「結婚」の長い歴史の中では、幾度となく(それこそ死ぬほど)、配偶者でない人とセックスをする「裏切り」が行われてきた。
所謂、不倫。
ただし、それは人間の本能である。
周知の通り、男は往々にして股間でモノを考えて行動するし、アリスは女もまたそうである(ことがある)と語る。
であれば、本能に矛盾した「高潔な結婚」なんてものは破綻してるんじゃないのか、と本作は言っているように思う。
(関係ないですが、金属バットの漫才で「九九って破綻してるんちゃう?」というワードがあったのを思い出しました、なお九九は破綻していない)

仮面パーティのシーンは恐ろしくも、美しい。
特に裸体の美を強調した撮影は"神"。
この奇怪なイベントは非常に象徴的で、「バレなきゃ皆んなヤるよ」という強いメッセージ性を感じる。
"仮面"という小道具は「バレければ…」のメタファーであり、だからこそ、部外者に対する仕打ちが"仮面を脱がせること"なのだと思う。

120%不倫がバレない世界なら、ほとんど皆んなヤるんだろうな。
僕は今後しばらく独身でいるつもりだけれど、以前から「結婚」に対して抱いていた疑念的なものがスッキリと映像化されたような映画。
こういうことを公然と言うとクズ扱いをされますが、キューブリックはその"偽善"にメスを入れたかったのではないでしょうか。
その後、トムクルーズ&ニコールキッドマン夫婦が実際に離婚しているのもリアルですが、結婚をするのであれば多少のことには"目を瞑る"のも大事だよ、ということもまた本作のメッセージだと思います。
たかはし

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