みおこし

火宅の人のみおこしのレビュー・感想・評価

火宅の人(1986年製作の映画)
3.5
昭和31年夏。作家の桂一雄は、妻ヨリ子と5人の子がいる身ながらも、新劇女優の恵子との不倫に走り、同棲を始める。しかし、恵子との間に子供ができたことから2人の運命の歯車は大きく狂っていく…。

深作欣二監督作コンプリート企画。小説家の檀一雄が20年間にわたり断続連載した長編小説を深作欣二監督が映画化。大人の男性の色気が大爆発中の緒形拳さんを主演に迎え、当時人気絶頂の原田美枝子さんと松坂慶子さんが不倫相手役、さらにいしだあゆみさんが妻役という豪華すぎる布陣。
深作作品といえばダイナミックで男臭い作品が多いので、かなり落ち着いた雰囲気の文芸映画である本作は異色に感じられました。家族がありながらも、不倫の恋に走り続けて奔放に生きる作家の悲哀が淡々と綴られていきます。本当に一雄がやっていることは一ミリも肯定できないし、「はっきりしなさいよ!」とイライラする一方で、緒方さんがあまりにカッコよすぎるので何だか許しちゃうんですよね…。80年代当時、もし「女性にだらしない役を演じても憎めない俳優ランキング」があったら断トツの1位は絶対緒方さん(笑)。
一雄のせいで人生を翻弄される恵子を演じた原田美枝子さんの情念あふれる演技にも引き付けられたし、現実逃避のために宗教に入れ込んでどんどん生気を失っていくいしだあゆみさんの怪演も圧巻でした。本当に昭和の映画の俳優さんの体当たり演技、どれも素晴らしいものばかりでいつも古い邦画はいいなあと思わずため息が出てしまいます。
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