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火宅の人のikumuraのレビュー・感想・評価

火宅の人(1986年製作の映画)
3.4
【生真面目な無頼派】
檀一雄の自伝的小説をもとにした映画。
人生で最初にハマった、かつ全作品ほぼコンプしている作家といえば太宰治くらいしかいない気がするが、
とにかくその太宰治の親友としては知っていた檀一雄。
走れメロスの置いてきた親友は、実は旅先でお金がなくなって宿屋に人質で置いてきた檀一雄だった・・・
みたいな話もありましたか(笑)

そんな檀一雄が、戦後、人気作家となってから、
名前は桂一雄に変えてあるが、とにかく、
その桂と新劇女優の愛人(原田美枝子)、妻(いしだあゆみ)と家族、そして行きずりの水商売の女(松坂慶子)を巡る話。

自ら欲望のままに行動し、その当然の帰結を、苦悩して受け止めているんだか、どこか他人事のようにおかしがっているんだか。
小説にしてそれで家族も食わせていた、というので後者の要素も強いように思った。
破天荒なようでいてそこら辺は太宰と違うかな、でもどこか通じるユーモアのセンスもある。
どこかとってつけたような独白、スラップスティックコメディのようなドタバタ、
知らずに見たら濡れ場がメインでそのためにこういうチープなドラマが挿し挟まってるのでは・・・
と思ってしまいそうだが、これはこういう世界観なのだろう。
結局お金は稼げるからと居直って好き勝手やってるだけやようにも見えるが・・・(笑)

これも究極の甘えだとは思うが、主人公は心の底では家族を必要としてるんだろうなとも思った。
愛してれば済む問題ではないのだが、桂なりの愛がある。
日本脳炎で全身が麻痺して家に帰ってきた息子に、水泳の実況中継の真似をしてみせる場面とか。

回想の中で桂の母を演じてるのが檀一雄の娘の壇ふみなのが面白い。
あと中原中也は真田広之かー。
そして原田美枝子が華奢で松坂慶子がダイナマイトボディなイメージだったのだが、
実際は逆でした。いや、ちょっと原田美枝子(略
それにしても松坂慶子の華やかさというか存在感というか、すごいなあ。
でも最後はいしだあゆみに全部持っていかれた。
奥さんが一番すごいわ。。
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