クリストフォルー

麗しのサブリナのクリストフォルーのレビュー・感想・評価

麗しのサブリナ(1954年製作の映画)
4.5
「ローマの休日」は、日本でも公開当時(1954年)の年間興収1位だったようで、それに続くオードリーの出演作がアメリカとほぼ同時に公開されたことでも、日本での期待の高さがうかがえる。ボギーとホールデンが出ていても、メインにフューチャーすべきは新星のオードリーだと考え、タイトルの頭に「麗しの~」を付けた日本の配給会社の担当者は素晴しい。

“アン王女”は言うに及ばず、書店員の”ジョー”にパリ娘“マリアンヌ”、あの“ホリー・ゴライトリー”、未亡人“レジーナ”、花売り娘“イライザ”、画家の娘“ニコル”に盲目の“スージー”と、それぞれに忘れがたいヒロインを演じたオードリーだが、マイベストは、お抱え運転手の娘“サブリナ・フェアチャイルド”だ。
相手役と呼ぶにはおこがましいが、ケーリー・グラントでなくボギーがライナス(この名前にもニンマリしてしまう)役であったことも、じつは一番難しい役どころをホールデンが演じていることも、そして、本作がモノクロ作品であることも、全てが大正解としかいえない。
ボギーがオードリーに歌(♪『バラ色の人生』)をリクエストするシーンさえ、他の役者では成立しないおかしさがある。唯一無二の映画とは、こういう作品のことだ。
吹替え版で二度愉しめる日本人は幸せだね。

ハリウッドの“ブラックリスト(脚本評価リスト)”に登録されるような、未映画のすばらしい脚本もあるのだろうが、映画製作の紆余曲折の中で、演者に合わせて練り上げられ生み出された脚本は、本当にため息が出るほど美しい。「ローマの休日」のオードリーの高貴さと庶民性を損なわせず、「カサブランカ」のボギーのロマンチストな内面を再現し、ホールデンの硬軟を問わない演技力を反映させた、それぞれのキャラクターの見事さ。登場人物の全てに、ちゃんと見せ場の用意された演出。完璧な流れでたどり着き、ワンシーンで決めたエンディング。観るたびに幸せの涙があふれます。
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