てつこてつ

ジョニーは戦場へ行ったのてつこてつのレビュー・感想・評価

ジョニーは戦場へ行った(1971年製作の映画)
4.0
やるせなくも美しい作品。

原作を読んだのは、高校生の頃か・・。

母国のために戦地に向かい、敵の爆撃を受けて両手両足、さらには頭部にも重大なダメージを受けて、いわばbasket case(肉の塊)のような存在となってしまった一人の純朴な青年。

人体実験とも言える目的で生命維持装置だけで生きながらえている彼の心のメッセージを、幼き頃の父や母との思い出、恋人との思い出など、一部の脳の機能はしっかりしている彼の心象風景を交えながら、痛烈に戦争社会を批判した(製作された1971年は折しもベトナム戦争介入後、米国が疲弊しきっていた時代)衝撃作。

作品中の大部分を占める病室内シーンの青年の全身包帯に覆われた姿は本当に痛ましく、モノクロで描かれるのに対し、彼が過去の記憶を辿り、また幻想に耽るシーンは美しいカラー映像で描写される。

青年役を演じたティモシー・ボトムズは、同じ年に製作された「ラスト・ショー」同様、ここでも素晴らしく繊細な演技を見せる。これほどの俳優が、後に良い作品に恵まれなかったことは、つくづく残念。

ラストシーン。繰り返し繰り返し青年が心の中で叫び続けるメッセージ、「S.O.S. Help me!」は観る者の心を痛切にえぐる。

この作品の主題歌でもなんでもないが、PPMの有名なフォークソング「悲惨な戦争」を聴く度にこの映画を思い出す。まさに戦場に赴く恋人の名前Johnnyという固有名詞が出てくるからだろうな。
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