「ローマの休日」など数々の名作を描いた脚本家、ダルトン・トランボが唯一メガホンを撮った映画作品。
手、足、目、耳、口、人が生きていくにあたって最も重要な器官を全て戦争で失ってしまった男ジョニー。心臓こそ動いていて、チューブによって生かされているものの、人としての尊厳、自由、全てを失い、ただ政府によって厳重に隔離され保管されることになってしまった男の末路。全てを戦争のせいにするのもどうかもしれないが、このような運命を背負ってしまった人間、何も悪いことはしていないのに自由に生きる権利も死ぬ権利も失って、ただ夢現のまま空想と天国の合間を彷徨う男を見ると、何としてでも助け出しだくなってしまった。完全にあの看護婦さんと同じ気持ちになった。
しかし、無常にも最後まで救いようはなく、助けを乞いながら生かされるのであった。地獄ですら生ぬるい彼の生きている世界が淡々と描かれていて良かったと思う。
彼の妄想の世界はカラーで、現実の世界はモノクロで撮るというのも、現実の残酷さというものを見事に滲み出していて良かったと思う。妄想の中でかつての彼女、親への懺悔を捧げながらも、もう会えないということを知るとさらに胸が打たれるのである。
しかし、ちょっと引っかかったのが、あれだけ長い間動かずに一年間も放置されたら流石に首元とかに床ずれとか壊死が起こるのではないかと思ってしまった。でも、恐らく看護婦さんがやってくれているのであろう。ていうか、そういうイラン考えはどうでもよかった。
救いようのない映画は大好きであるが、ずっと見たくて見てみたがやはりラストはすさまじかった。HELP・・と内心ずっと呟く主人公、その意味は「俺をここから解放してくれ」だろう。そのままブラックアウトするのはトラウマになった。