キッチー

運動靴と赤い金魚のキッチーのレビュー・感想・評価

運動靴と赤い金魚(1997年製作の映画)
4.2
初のイラン映画。ペルシャ語も新鮮でした。

物語は、
修理した古い妹の靴を兄がお使いの途中で無くしてしまい、親に言えない二人が兄の靴をシェアする生活を始めるのですが、そもそも無理があり、色々と問題が発生します。苦労する兄は近く開催されるマラソン大会の賞品に運動靴があることを知る。そして大会に出場するのだが...という話。

真面目で親の手伝いもする優しい兄妹が、貧しさ故に、落ちてしまった落とし穴から出られなくなる様子が、とても切ないです。兄妹の優しさまで仇になる。悪いことばかりでなく、いいこともあるんですが、神様は意地悪ですね。

何にもないところですが、小さな水路や水を溜めた小さな池は印象的でしたね。終盤、疲れた兄が傷ついた足を池に入れたところに赤い金魚が集まってくるシーン、癒されました。そして、お父さんの自転車に積まれた荷物が、兄妹の未来を想像させるところ、良かったです。

主役のお兄ちゃんアリを演じたミル=ファロク・ハシェミアン君はテヘランの貧しい地域の小学校で監督が見つけ出した少年で、この役と重なる部分が多く、泣きの演技も真に迫ってましたね。
妹ザーラ役のバハレ・セッデキちゃんも、もともと役者ではなく、監督が見つけたとのことで、マジッド・マジディ監督のキャスティング手腕が見事過ぎると思いました。

途中までの展開でヴィットリオ・デ・シーカ監督のイタリア映画「自転車泥棒」を観た時の切なさを思い出しました。父親と息子の自転車二人乗りのシーンや貧しい家庭のシーンとか、共通点もありましたね。マジディ監督が影響受けたかは定かではないのですが...

終始子供目線の映画なんですが、監督の感性の豊かさを感じる繊細でいい映画でしたね。友人にも勧めたくなりました。
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