熊太郎

哀しみのトリスターナの熊太郎のレビュー・感想・評価

哀しみのトリスターナ(1970年製作の映画)
4.2
なんだか途中からブニュエル映画だとかどうでもよくなってフェルナンド・レイのチャームにひたすら萌えていた。
パジャマ姿、眼鏡が好い。ウキウキで初夜の準備したのにドヌーヴに調子乗ってんじゃないわよと鼻であしらわれる哀しみのひげもじゃ。


ドヌーヴはあいかわらず出口みうしなった美少女性と女主人らしさを幸薄そうに往来している(脚まで切断されてもた)
無防備な箱入りが回数こなしてやさぐれて、要塞のごとく硬化していくさまの生々しさよ。
ドヌーヴの作品群をふまえるとトリュフォー『終電車』のラストはやっぱり泣ける。


豆ふたつ並べてトリスターナが無言でじっと見つめたり、聴覚障害の少年に唐突に裸見せて恍惚の表情を泛べたり、なに考えているのかわからないシーンが不意に挟み込まれるのがおもしろい。共感や解読を拒むような。

老いぼれ貴族を看取って女二人で颯爽と歩き去っていくラスト、バーホーベン『エル』の元ネタ?

高い壁に囲われた街のロケーションがずっと良くて、外界の見えなさ、通路の狭さ、拓けなさ。
いつものカフェ、見知った友人、通じ合えるジョーク。何描いてるのかわからない(興味を持たれない)画家。射殺される野良犬、室内飼いの犬。

どこにも行けなさと、窓を開けるラスト。
熊太郎

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