このレビューはネタバレを含みます
実在のコメディアン、アンディ・カウフマンを描いた伝記映画。
若手芸人の苦労と成功が描かれるのかな~と思いきや、わりと早い段階でシットコムの仕事を得て成功を収めます。
そこからがカウフマンの面白いところで、非常に前衛的というか、風変わりな表現に挑戦していくんですよね。
映画の冒頭で、カウフマンが第四の壁を超えて喋りかけてくる様に、現実と虚構の境目が曖昧になる瞬間が、彼の中で大きな興味を占めていたのでしょう。
そう考えると、最終的にプロレスへ傾倒していくのも頷けるというか、プロレスこそ、まさに現実と虚構を曖昧にさせるエンタメの代表格ですから。
カウフマンのやる事を見ると、「これはガチなのか?ネタなのか?」と思わされ、驚きとスリルを味わう事が出来ます。
ただ、その一方で、彼の狙いが理解出来ず、ただひたすらに困惑し、退屈する人も現れると。
個人的に残念だったのは、彼の繰り出すメタ的な表現が、笑いや感動といったエンターテイメントにまで昇華されていない事。
メタ的な表現というのは手段であって、目的ではないと思うのですが、彼の場合はそれが目的になってしまっている。
「憎まれても関心を集めればいい」みたいな台詞もありましたが、それだと炎上系インフルエンサーとやっている事が変わらないし、もうちょっと志を高く持って、洗練された芸を見たかったな~と思いました。
現代で言うと、サシャ・バロン・コーエンのやっている事は、かなりカウフマンに近いものがあると思うし、カウフマンの後継者とも言えるのかもしれません。
そう考えると、カウフマンは時代の先を行き過ぎていたのでしょうね。
ちなみに、Netflixに本作のメイキングドキュメンタリーがあるそうなのですが、こちらもジム・キャリーのヤバ過ぎる役作りが見れて面白いそうなので、是非チェックしたいなと思います。