毛並み、水の次は人間ということで、人間を主人公に据えた映画はピクサー初。現実社会と家族の絆とヒーローものを掛け合わせて極上のエンタメに昇華したこれまた見事な作品だ。
主人公達のインタビュー映像→タイトルコール→カーチェイス の始まりからしっかりボルテージをブチ上げてくれる。そこから顕になる「元スーパーヒーロー」という設定がシュールで面白い。スーパーヒーローが憧れの対象ではなく、市民から煙たがられている存在として描かれているのが新鮮に映る。
プロットとしては、あるあるのファミリームービーとあるあるのヒーロームービーを掛け合わせたストーリーだけど、特筆すべき点はその映像の派手さだと思う。過去作に比べて圧倒的に激しいカメラワークとアクションからは、観ているだけでわくわくしてしまう映画のパワーを感じられた。
爆発や氷などの特殊効果、どすんと響くような重厚感と物理を肌に感じる。
ヒーローという非現実的な設定なのに、家族や社会制度といった現実的な設定が丁寧に組み込まれているのでふわふわした単なるフィクションに終わっていないのも脚本の妙だった。かつてヴィランを倒して市民のヒーローだった彼らは、今ではスーパーパワーを隠して会社で働き育児家事に勤しむ。
今の幸せとかつての人生への未練の天秤は、家庭を持つという選択をした多くの人に、自分事の物語として刺さるのではないかと思った。
親子で観て、自分だったら誰の能力が欲しい？みたいに盛り上がるのも楽しいと思う。因みに自分は圧倒的にお姉ちゃんのヴァイオレット派。綾瀬はるかの吹替も相まって、可愛い。前髪で顔を半分隠し好きな男の子を陰から見守っていた内気な子が、ラストに髪を上げ目を見て映画デートに誘っていて推せる。
『レミーのおいしいレストラン』や『カールじいさんの空飛ぶ家』など数多くのピクサー作品でサントラを担当するマイケル・ジアッキーノが手掛けた音楽がかっこいいので、サントラにも要注目。
《第77回アカデミー賞戦歴》
受賞
★音響編集賞
★長編アニメ映画賞
ノミネート
⭐︎脚本賞
⭐︎録音賞
