モールス

我等の生涯の最良の年のモールスのレビュー・感想・評価

我等の生涯の最良の年(1946年製作の映画)
4.5
アメリカは世界大戦での戦勝国ですが、一市民と軍人にとっては爪痕は大きかったのですね。様々な形で帰還兵の悲哀が描写されて、本当に心を打つ物語になっています。
帰還兵たちは戦地に赴き、離れ離れになってた家族や恋人たちとの再会に不安を抱いてました。特に戦地で両手を失った男は、恋人や家族に迷惑を掛けることに負い目を感じてる姿が痛々しかったですね。また愛する人たちの温もりを両手で感じることが出来ない侘しさに戦争の残酷さが伝わりました。
出征前に20日程の結婚生活をしていた男も、戦争の間の故郷での空白の時間に戸惑ってました。一見女性には不自由しない伊達男ぶりですが、距離が離れると気持ちが離れる人間の心の難しさが伝わってきました…。それでも大尉の娘と知り合い、新たな恋を見つけるという逞しさには救いがありました。
大尉も銀行員として社会にカムバックしたものの、戦地と本国の価値観の違いに戸惑いを隠せないようでした。それで酒に逃げたりして…。
本作は戦後の描写による反戦映画だと思います。決して愛国論を説くものではありません。ベトナム戦争では帰還兵の苦難を描写した作品は多くあります。それは国民から批難された戦争であり、時代の潮流でもあったからでしょう。本作は日米の戦争で戦争の罪なる部分を見せてるところに潔さを感じます。そのような中でも登場人物たちが立ち直る方向に導かれ、救いのある作品に仕上がってるところに名作と言われてることに納得が出来ます。
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