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我等の生涯の最良の年のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

我等の生涯の最良の年(1946年製作の映画)
4.0
マッキンレイ・カーターの小説をロバート・E・シャーウッドが脚色、ウィリアム・ワイラーが監督したヒューマン・ドラマ。
第二次大戦から帰還した3人の復員兵の"戦後"を、それぞれの家族や恋人との関係を絡めて描く。
原題: The Best Years of Our Lives (1946)

アメリカ中西部の町ブーン・シティ(オハイオ州シンシナティを想定)に帰還した三人の復員兵…
①軍曹だったアル(富裕層、フレドリック・マーチ)は、妻、娘、息子に迎えられ、元の勤務先の銀行でも昇格して退役軍人の融資にあたるが、子どもたちや頭取の態度に違和感を感じる。
②空軍大尉に昇進して凱旋したフレッド(労働者階級、ダナ・アンドリュース)は、家に新婚だった妻(ヴァージニア・メイヨ)の姿はなく、職場にも居場所はなかった。さらに、飛行機事故のトラウマにも苛まれる。
③水兵だったホーマー(中流階級、本当の傷病兵で義手、素人俳優のハロルド・ラッセル)は、アメフト選手だったが、乗っていた戦艦が撃沈された時に発生した火災で両腕は失われ鉄の義手になり、家族や恋人に心を閉ざす。

「昔に戻るなんて絶対にできっこない」

「理想の夫婦なんかじゃないわ」

「我が銀行は心ある銀行だ。復員軍人への小口融資はアメリカの未来への投資だ」

「君の優しさにつけこんで、君を縛りつけたくない。
せめて、努力させて。無理かどうかやらなきゃ分からないわ」

「君を幸せにできるまで何年もかかる。金もまともな家もない。きっと苦労続きだ」

帰還する飛行機の中で知り合った同郷の三人の男の姿に戦後、戦勝国アメリカが抱えた苦悩が重ねられ、社会復帰に挑む男たちを支える三人の女性の愛が作品を美しく彩る。
その三人の女性…
①夫と娘を優しく見守る、アルの妻ミリー(マーナ・ロイ)
②仕事でも妻との関係でも苦しむフレッドを愛する、アルの娘ペギー(清純な美しさで演技力もあるテレサ・ライト)
③心を閉ざした恋人ホーマーに献身的な愛を捧げる隣家の娘ウィルマ(清楚なキャシー・オドネル)
三人の女性を描くことで愛の美しさを謳い上げたウィリアム・ワイラー監督の手堅い演出が光る。
ディープ・フォーカスを多用したグレッグ・トーランドの撮影はこの映画でもうまく生かされ、ラスト・シーンを見事に締め括っている。
なお、バーを経営しているホーマーの叔父ブッチ役で「スターダスト」の作曲家兼ピアニストのホーギー・カーマイケルが、軽快な演奏を披露している。
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