うめまつ

かいじゅうたちのいるところのうめまつのレビュー・感想・評価

3.8
毛むくじゃらのディスコミュ二ケーション。あなたのことは好きだけど、あなたの好きなものは好きになれない。みんなといっしょにいたいけど、わたしがいるとみんなは楽しくないみたい。だれかを信じてみたいけど、なかみをぜんぶ知ろうとしてこわしてしまう。星のように満点で月のように汚れなく太陽のように壊れない、そんな愛情が欲しいだけ。生まれて死ぬまでのほんの数十年の永遠が欲しいだけ。それすら叶わない世界中のかいじゅうたちは、今日も同じ空に向かって遠吠えを続けている。

絵本が原作だから勝手にファンタジックでほっこりした作風をイメージしてたけど、なかなかにささくれ立ってもつれ合っている。そして意外なほどかいじゅうたちがアクロバティックに踊り、走り、そして飛ぶ!もっとのっそり歩いてバウバウ喋るものとばかり思ってたよ。。衝動的に暴力性も発揮するし、問題がある生き物はすぐ食べようとするのに(人間は小骨が多いらしい)、「悲しみをなくせるか?」なんて悩める哲学者みたいな事も聞いてくる。私の中の《モフモフで大きな未知の生物》のデフォルトはやっぱりトトロで《共通言語は持たないけど気持ちが通じる瞬間》を求めてたんだなという事に気付く。まぁトトロも飛ぶし踊るし多分肉食だけど。どんぐりは調味料?

マックスの感情の発露をそのまま音にしたような、雪の上に星屑をばら撒いたようなキラキラしたサントラがぴったりでとても素敵なんだけど、ずっと頭の片隅できのこ帝国の『怪獣の腕のなか』が鳴っていて、見終わるとそのままED曲にしてもいいくらいしっくりきた。あと私も王様になった暁には最初の指令を「国民よ踊れ!」にしようと思った。
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