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レクイエム・フォー・ドリームのSのレビュー・感想・評価

4.0
ドラッグに溺れていく人々を技巧を尽くした驚異の映像で描く衝撃作。
原作は脚本も手がけたヒューバート・セルビー・ジュニアの小説『夢へのレクイエム』(Requiem for a Dream)。

テレビを見るのが何より楽しみな中年未亡人サラは、ある日テレビ番組への出演依頼の電話を受け、お気に入りの赤いドレスでテレビへ出るためダイエットを始める。一方、息子のハリーは恋人マリオンとのささやかな夢を叶えたいと麻薬売買に手を染める。季節が変わり、赤いドレスが着られるようになったサラはダイエット薬の中毒に、麻薬の商売がうまくいかなくなったハリーとマリオンは自らがドラッグの常用者となっていた……。


本作は単にドラッグを描いたものではなく、テレビでもコーヒーでも、時にはセックスもあらゆるものが中毒になり得るという怖さを描いている。

2つの物語が並行して描かれ、一つはエレン・バースティン演じる孤独な未亡人サラの物語、息子ハリーと恋人マリオンの話。物語を結びつけるために「ヒップホップ・モンタージュ」という手法で、断片的なカット、短いカットを反復させたりというスタイリッシュな映像とシャープな音とを繋いでいく。
ハリーとサラがドラッグでハイになる時(覚醒を瞳孔が拡大する様で表現)、サラがコーヒーと薬を飲む時に使われている。

ひたすら陰鬱で重い内容ながら、斬新なヴィジュアルと演出によって観る者を惹きつけ、ハイスピードで展開していく映像が、時に(意味が存在する)ミュージビデオのようにも感じられる。

エレン・バースティンの妄想に取り憑かれた狂気的な演技、壮絶な末路を迎える登場人物たちを演じた俳優陣の体当たりの演技が圧巻。


2023/01/27 DVD
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