あきらっち

レクイエム・フォー・ドリームのあきらっちのレビュー・感想・評価

4.5
“レクイエム・フォー・ドリーム”

穏やかな幸福を得たいと願う
誰しもが描く他愛もない夢にさえ、
禁断の近道から振り返れば、
そこには底が見えない真っ暗な奈落がぽっかりと口を開けて待ち構えている…

この映画、単に薬物依存の映画ではない。

棚ぼたで手に入る夢
犯罪で手に入る夢

“夢”って一体何だろう…
夢を掴むプロセスが大事だって、そんなの綺麗事なのかな。

道を踏み外すこと自体は大なり小なり誰にも身に覚えがあるだろう。
格好いいをはき違えた若気の至りに、大人になって振り返れば恥ずかしい思いをした人だって少なくないはずだ。

道を踏み外せば即“外道”とは思わない。

夢を叶える為の近道に依存し、なりふり構わずしがみつく、取り憑かれたような狂気を見せた時、人は外道に成り下がるのだろう。

狂気は孤独を生む。
幸せになりたかった筈なのに、
大切な誰かすらわからなくなって、
底無しの闇の中で1人膝を抱え込む。

あの日に戻りたい。
汚れも不安も何も無く、
温かい無償の愛に包まれた母の胎内のような
あの場所に。


※主要4人の迫真の演技が素晴らしかった。
母親サラ役のエレン・バースティンの恐いくらいの怪演、息子ハリー役のジャレッド・レトー、恋人マリオン役のジェニファー・コネリー、悪友タイロン役のマーロン・ウェイアンズ達の次第に転がり堕ちていく狂気と絶望。

※そして映像と音楽。
私にとってとても斬新だったカメラワークや画面の切り替え。“ヒップホップ・モンタージュ”という言葉を初めて知った。
次第に音量とテンポを増す音楽に、リアルな恐怖を煽られ、逃げ出したくても逃げられない。
映像と相まった音楽が、本作の圧倒的な破壊力に拍車をかけていた。

※前評判を見ず本作を鑑賞したので、ラストにかけて畳み掛けるようなあまりの破壊力に、一生忘れられない程の衝撃を受けた。
救いようがないとはまさに…

転落の構図と薬物の恐怖。
キラキラと輝く夢の傍らには、プロセスに見合った闇の深さが待ち構えているのかもしれない。
それは幸せになりたい誰の側にも等しく。
あきらっち

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