茶一郎

レクイエム・フォー・ドリームの茶一郎のレビュー・感想・評価

4.3
【短】「モンスターのいないホラー映画」、「飛行機から飛び降りてパラシュートを忘れたと気付くが、地面に激突してから死ぬまでの一瞬が続くような体験」と監督自身豪語する、気分が落ち込んでいる時に見たら、もっと落ち込む事必至の厭な映画が本作『レクイエム・フォー・ドリーム』です。
 何かに中毒してしまった人物の破滅を描くダーレン・アロノフスキー監督の代表作。本作では、市井の人々をその破滅に向かう登場人物として設定し、アメリカンドリーム、愛、自己顕示欲、誰もが一度は持った事がある感情と行動がちょっとしたボタンのかけ違いでトンデモない破滅まで急落下する様子を描きます。

 何よりの特徴は、監督自身が「ヒップホップモンタージュ」と表現する、異常なまでの反復とマクロショットの連続。不安定な映像が、登場人物たちの主観と一致し、観客の心を乱します。
 そして上述の監督の言葉通り、破滅方向に人生がシフトしてから最終的な破滅のゴールに向かうまでの過程が長いのも本作の特徴です。観客は延々と厭な映像と物語を見せられる地獄でした。

 こんな浅はかな想像力で、人の不幸をあざ笑うかのような映画があって溜まるかと思いますが、実際、その不幸が面白く映ってしまうのですから映画は怖いものだと思います。
茶一郎

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