さききち

レクイエム・フォー・ドリームのさききちのレビュー・感想・評価

4.4
『マザー!』『ブラック・スワン』のダーレン ・アロノフスキー、00年の作品。

“中毒”が齎す、束の間の幸せと破滅。
現実の認識力と現実に侵食する幻覚を見事なバランス感覚で描き、各種依存症(薬物だけではない!)と中毒が蔓延する現代社会の正常だが異常な状況に一石を投ずる。

色彩構成も見事。
希望に満ちた前半の暖色、
中盤の露骨な寒色への転換、
そして薄暗い闇の世界へ…

開始直後からの画面2分割、魚眼レンズでの撮影など、魅力的な画作りで気持ちを引き摺り込む。
幻覚シーンでのセット解体→再構築・空間融合はまさに夢のよう。スポットライトに照らされる笑顔の哀しさは、後に作られたD・リンチの『マルホランド・ドライブ』のよう。

「後味が悪い映画」としてコピペになるほどの作品だが、イメージだけが先行している感がある。
決して周りに勧めまくれるような映画ではないが、
クリエイターの意欲と感性に喚起させられる傑作だ。
さききち

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