河

新ドイツ零年の河のレビュー・感想・評価

新ドイツ零年(1991年製作の映画)
5.0
ヌーヴェルヴァーグに続いて、静かで張り詰めたようなオーラに満ち溢れたような映画で最高だった

冷戦時代にスパイだった男としてレミーコーションがベルリンの壁崩壊後にドイツを訪れる話でアルファヴィルの続編のようなものになっている 時を物語れるかというセリフから始まって、そのスパイの崩壊した東側への懺悔のような形で、芸術家や音楽家、思想家、マルクス主義の活動家などドイツで生きた人たちについての記憶、走馬灯のようなコマ送りの過去の映画の引用と共に、おそらくゴダールが生きた時代のドイツの歴史が語られていく

自分の内面を見つめて精神を求める、孤独の静寂の中からイメージを見出してきたような国、ロマン主義や表現主義のように常に民族の亀裂、崩壊から思想を生み出してきた国である一方で、その非理性への追求があるからこそ、理性によって利用されてナチスとして均質化した国としてドイツを語る

ただ今回の崩壊、ベルリンの壁の崩壊の後には今までのような内面の追及ではなく、精神よりも金銭を優先する西側の社会があって、その先に新たなナチスとヒロシマが生まれて没落するだろうっていう、精神や東側へのレクイエム的な話かつこれからの社会への黙示録のような映画になっている

荒廃した寒々とした東側に対して、西側はネオンや車、クリスマスの街並みになっている その二つが対比される冒頭のネオンに対して霧の立ち登る木の映像から最高に美しい

この、自分の時代が終わってしまったような感情と自分の憧れた、目指した歴史の一つの物語としての崩壊、更にそこに自分が関わってきた映画の流れの終わりが重なったような、このゴダール自身のものだろう寒々しい孤独感と苦々しさに非常に感動した
河