梅田

倫敦(ロンドン)から来た男の梅田のレビュー・感想・評価

4.1
「偶然にも殺人事件を目撃し、偶然にも大金を手にしてしまった」鉄道員を主人公としたノワール・サスペンス。この事件のあと彼の人生は大きく狂っていくことになるわけだが、重要なのは、事件を目撃したのは偶然でも、金を手にしたのは故意であるということだ。
この手のプロットでは、警察の捜査が始まったことをきっかけに犯人が錯乱していくのが普通だと思うが、この映画で彼は、警察に出会うより先に、真っ先に自責の念のみによって精神に変調をきたしてしまう。人を狂わせるのは、金ではなくて罪そのものなのだ。この映画の結末で彼に残されたものもは示唆的だ。

瞬間最大風速的には『ニーチェの馬』の冒頭に負けるけど、ひたすらキマったカットが続く。長回しに次ぐ長回しで、ほとんど台詞も表情の変化もなく、ただカメラの移動によってのみ被写体を多角的に捉えようとする。重厚としか言いようのないドローン音楽も緊張感を高める。やはりこれもいつか劇場で再見したい。
梅田

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