半兵衛

ひとりぼっちの青春の半兵衛のレビュー・感想・評価

ひとりぼっちの青春(1969年製作の映画)
4.2
大恐慌時代のアメリカを舞台に、男女一組でほとんど休憩せずにひたすらダンスして最期に残ったカップルが優勝という過酷なレースを参加した主人公たちを通して描かれる。1960年代末期というニューシネマ時代の作品のため作風は何となく予想はしていたものの、過酷なダンス大会でお客に動物やおもちゃ扱いで見られながら、衰弱して正常な思考が出来なくなりそれでも延々と踊り続ける登場人物たちの姿に見ているこちらまで神経が麻痺しそうな気分に陥る。そして主人公とヒロインが迎える悲痛というにはあまりにも悲しい結末は見終わったあと鬱状態になる。

あと途中で気づいたのだが、大金のため必死になって笑われ嘲られてもダンスをする主人公たちはコロナ下で社会が変貌しているにも関わらず正常なふりをして仕事をし続けている我々社会人という名の社畜とダブって仕様がなかった。正直大半の人は給料が減ったり、会社の内部事情や家庭の事情によって神経をすり減らしたりとそれどころではないのだが、それを認めたら普通の生活が崩壊するし他に仕事もないので敢えて今の仕事を表向きは何事もないように続けている人も多いはずのことを考えると、この映画の登場人物により一層共感し心が痛んでくる。それから途中どう見ても死んだりしている人が出てくるのに、大会が終わるのが嫌なので無視したりごまかしているのが社会の構図を見ているようで心苦しくなる。

ちなみにタイトルだと青春映画っぽい作風だけど、実際の映画は一ミリも青春要素がないので注意。むしろ明日のない大人たちという、少年少女が憧れないダメな人たちばかり。だからこそ成人したあと見るとその辛さがわかる。
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