ryosuke

虎鮫のryosukeのレビュー・感想・評価

虎鮫(1932年製作の映画)
3.8
エドワード・G・ロビンソンって若い頃はかなり間抜けな役柄が似合う感じだったんだな。年食って良い味が出てきたタイプなのかな。いやこれはこれで勿論魅力的なんだけど。
ヒロインのジータ・ジョアンは超美形で光り輝いている。「暗黒街の顔役」同様にヴィンス・バーネットも良い味を出している。
「ジョーズ」のドレイファスの台詞の「tiger shark」は本作へのオマージュだとか何とか。確かにサメ映画の源流っぽさは感じる。「ジョーズ」の原作ではクイントは本作のようにロープが足に絡まって死亡するらしい。
マグロが出てくる二つのシーンが最大の見せ場かな。マグロがベルトコンベアーを流れてくる描写が次々に繋がれるシーンの運動感が素晴らしい。ちょっとワイズマンの工場の描写っぽい印象も受ける。流れるベルトコンベアーから道路を歩く主人公たちへとイメージが滑らかに連鎖する。荒波の中でのマグロの一本釣りはドキュメンタリータッチで迫力が凄いんだけどどうやって撮ってるんだろうか。
マイクがイケメンの相棒パイプスとヒロインにダンスをさせる瞬間、キータとパイプスの初対面の際の空気感を知っている観客はあっと思うのだが、マイクは気のいい奴というか間抜けというべきか、海岸でキータを呼びに行かせたり、看病で二人っきりにさせたり、パイプスの移住の意思を知らせたりとガンガン二人が接近する機会を与えてしまう。それ以上にまたパイプスがいい奴で、友人のために全てを捨ててメキシコに移ろうとすらする。タバコのマジックも素敵(熱くないのかな)。このパイプスのかなりの性格の良さとキータの献身が故に、本作はモテないおじさんが惨めな思いをして可哀想というだけには留まらない味が出ている。
人の良い男二人の友情物語として気持ち良く終わって欲しいものだが、本作のラストはホークス作品としては珍しいのではないかと思える後味の悪さになっている。
船内でパイプスとキータが二人きりになるシーンで、マイクの発砲による銃声が聞こえてくるのだが、これが効いている。二人が抱き合う瞬間に観客は音が止んでいることに気付き、二人が画面外に目線を動かす瞬間よりも一足早く悲劇の到来を予感することになる。
ラストは唐突に思えるマイクの残虐性の発露でゾッとさせるが、実は彼は冒頭のシーンでその片鱗を見せていたのだ。処刑の儀式を反復しようと試みるマイクだったが、本作には他にもう一箇所鮫が死を齎すシーンがあり、そのシーンのギミックが的確に作動することになるのだった。
ryosuke

ryosuke